新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

12回目の約束

10月23日号のFinance and economicsには、1957年にセメント、銑鉄、鉄鋼生産の目標値を定めたことにはじまった中国の第一次五カ年計画を引用しつつ、中国政府が12回目のそれを発表することが間近になったことに関する論評がなされています。「約束された」経済成長を維持するために、さらなる規模の拡大が語られるのでしょうか。

第一次計画から綿々と続くその流れは重工業・素材産業など装置産業への傾斜的資源配分による高度成長を支えてきたわけですが、The Economistは、事ここに及んで懸念されるのは、セメント、鉄鋼から果ては豆乳に至るまで、原料生産の過剰能力と装置産業の持つ設備集約性(≒雇用を生まない)と指摘しています。特に雇用については若年層の高学歴化に比例して就職が増加しなかったことなど(いわゆる蟻族の発生)、最近の社会不安につながる要素も少なくないものと思います。

確かにバブル崩壊時の日本など、経済面では借金と雇用と製造能力の3つが過剰だとされ、その整理に企業は痛みを伴う対応を余儀なくされたものでした。だとすると本来的には経済のソフト化やセーフティネットの議論などへの資源配分の転換を志向すべきと思われるところ、第十二次五カ年計画もまたぞろ国営大企業中心の数値目標から成り立っている模様です。仮に経済が毎年10%成長すると、7年でその経済規模は二倍になります。5カ年といえば、前後1年を加えると7年になるわけですが、2017年に2009年の倍も中国製品が売れるという絵姿は、果たして現実的と言えるのでしょうか?そろそろ、衝撃に備える態勢を考えなくてはならない時期が訪れつつあるのかもしれません。