新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

新幹線はカリフォルニアで成功するか?

ネット版、5月20日付のScience and technologyには、カリフォルニア州の高速鉄道計画と東海道新幹線を比較して、果たして同様のシステムは成功するか?という議論についての記事が出ています。

曰く、日本のように密度の濃い市場はカリフォルニアでは望みえない、曰く、高い自動車保有率に加えてすでに良く整備された高速道路や低価格を売りにする航空会社など、日本とは条件が違う、曰く、予想される初期投資は大変高価で鉄道事業では採算が取れない等々の条件を並べ立て、新幹線の導入には懐疑的な姿勢を示しています。

読者コメントも結構活発で、その中で面白いと思ったのが、新幹線は鉄道事業というよりは複合商業施設経営と併せた総合開発事業である、という分析です。確かに商業施設、観光、不動産、物流から通信さえも手掛けるJRのビジネスモデルは、その規模や範囲から言っても他に例を見ない超複合経営で、適当な民間会社が余剰人員対策や産業構造の転換に焦点を合わせて後付けで行う多角化とはわけが違う、全く異次元の広がりを見せていると言えると思います。その軸となるのは鉄道、そして駅が人々の暮らしの中心だったというややクラシックな発想なのかもしれませんが、その分判り易く受け入れられる素地があると言うことだろうと思います。発想の大本は、ことによると阪急の小林一三ではないかと思われるのですが、だとするとまさに時代や国境を超えた炯眼と言えようかと思います。

ヨーロッパのように、ある程度鉄道の素地があり、人々の生活パターンに溶け込みやすいところであれば、JR型ビジネスモデルも可能性はあるかもしれません(読者コメントによるとドイツでこれに類似した取組みがあるらしいです)。ニューヨークなども通勤電車が朝夕満員の人を乗せて走っていますし、どちらかというと日本に近い素地があるのですが、いきなりカリフォルニアか?と言われるとちょっと距離を感じるのが正直なところですかね。あとは鉄道屋が、いかにその自己認識を打ち破れるか?ではないかと思いますが、カリフォルニアだとすると新幹線&大規模ショッピングモール&レンタカー&大規模駐車場、みたいなイメージの駅を作るってことですかね。これはこれでまた、結構な距離がある話ではないかと思うのですが。