新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

女性の社会進出

出張が続き、一寸ご無沙汰してしまいました。

さて、7月23日のBusinessには女性の社会進出に関する興味深い記事が出ています。曰く、「女性を幹部社員としている会社はそうでない会社より利益率が高い」のにもかかわらず「女性が取締役になることを法律などで強いられた会社は平均して18%ほど企業価値を低下させている」のだそうです。

一見矛盾するこの二つのおハナシは、最初の分析の理由と結論を入れ替えてみるとつじつまが合うようになります。つまり「利益率の高い会社ほど、女性を幹部社員として登用している」すなわちそうするだけの余裕がある、ということでしょうね。

米欧型民主主義の考え方に反して、もっとも先進的である西欧・北欧諸国でさえh女性の取締役は少数派だそうです。最も進んでいるノルウェーは、上場されている大企業において取締役の30%強が女性ですが、これは2008年までに取締役の40%以上を女性とすること、と定めた法律があるためであろうと思われます。スウェーデンが25%、あとは米仏15%、中国やインドは6−7%だそうです。社会主義の影響もあってか、中国に行くと女性の社会進出が進んでいるような印象を受けることがありますが、実際はさほど多くない、ということかと思います。

では日本はどうかと言うと、The Economistには数字がないので他を参照して、東洋経済の情報ですが2009年段階でわずか1.23%だそうです。
http://www.toyokeizai.net/life/living/detail/AC/d0bd294015a02c24dec28095f01a926e/

なんでそうなるか、という分析についてThe Economistが挙げているのは、?競争や戦略構築などの面で女性は男性ほど得意ではない、?ワークライフバランスの面で女性は男性より家事負担が多い、といった理由を上げていますが、読者コメントでは?がある程度支持されているものの、?はバカ言うな、とばかりの反論が目立ちます。さらに興味深い話としては「長年同じ釜の飯を食った人間たちのクラブ」としての取締役会がよそ者を容易に受け付けないこと、それが女性となればなおさら、という意見が出ていたことです。なんだか日本人の意見を聞いているみたいな気がしますが、さらに興味深かったのはアメリカ人の意見として、「法律で女性比率を規制するなんざ、出身国でウィンブルドンの出場枠を規定するようなもの」という意見です(この議論を突き詰めると、サッカーのワールドカップはどうなるの?という話になる可能性もあるわけですが)。

日本について「女性の社会進出が遅れている」、という批判は一種言い古された感があるお話ですが、理念的な部分を除けば世界各国の多数派の考え方と基本的には近いところにあるのではないか、と言ったあたりが見てとれる記事でした。