新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

円高が、止まらなかった理由

10月29日号のLeaders、トップは10月27日に発表されたEU首脳会議による欧州通貨危機への対応策についての論評です。曰く、「穴は明白で、小難しく、説得的でない」、とのことで、全く酷評以外の何物でもありません。なるほどなと思われるのは、技術的な裏付けの不足や民間保有債権の50%削減に関する具体策が見えないこと、そしてさらに何より将来の心配を取り除けなかったのは、スペインやイタリアなどに万一のことがあった場合の「ファイアーウォールの弱さ」だということです。ここまで読むと、それが市場の反応(=落胆)であるとすればその反動で円高は止まらんわな、ということが変に納得できるわけですが。

だとすると、EU首脳会議直後に民主党政権、なかんずく安住財務大臣がテレビで声を高くしていた「これでひと山越えた」発言がどれだけ空疎なものだったか、ということですね。EUの政治家や官僚に対して、不要な遠慮をしてみせることが国家経済の運営よりも優先されるということですかね。「こんなんじゃ円高は止まらない」くらい言ってのけるくらいでないと、市場の信頼は(もはやそんなものはないという指摘すら出そうですが)失われる一方ではないかと。

せめて円高のメリットをとことん享受するくらいしかない状況が、ここしばらくは続きそうです。