新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

ひとつがダメになると

4月28日号のUnited Statesは、トップ記事で南部諸州の非合法移民問題と、共和党の打ち出した厳しい方向性についての疑問をなげかけ、Lexingtonでは大きく右旋回することで二大政党の一翼を担えるか疑問視されるまでになった共和党の変質についての疑問を呈しています。日本のメディアだけを見ていると、穏健派のロムニー氏が大統領候補に選ばれそうな勢いであることから、共和党がだんだん過激になっている、というイメージはつかみにくいところがあると思いますが、個別の問題や政策面では、どうしてだか多民族向けでなく白人寄りな、一般向けでなく金持ち寄りな、現実的というよりは主義主張が前面に出た対応が目立つようになってきていると言うことだと思います。結果としてヒスパニック系の支持は同党を離れ、合格点を取れているとはなかなか言ってもらえないオバマ大統領の再選を、どうかするとやすやすと許してしまう方向へと突き進んでいるわけで。穏健なロムニーに右寄りの発言を強いる今の状況は、彼自身に変節漢との印象を持たせることになり、どう考えても大統領選挙を迎える二大政党の一方としては問題あり、なわけです。何から何まで内部対立のパワーバランスでしか決められないとすると、党としての戦略もビジョンもあったものではないですね。

アメリカを支えてきた二大政党のうち、国益重視で多数派を取りやすかった民主党はその混迷ぶりが長いこと批判にさらされてきたのに対し、元来少数派となることが多かった共和党は、プラグマティックにパックス・アメリカーナ的なビジョンを打ち出すことで大統領選には比較的強い時代が続いて来たのですが、だいぶおかしくなってきたようです。共和党がダメになると、民主党はもっとダメになるのか、あるいは別の変化をとげるのか?

かつて、サッチャー女史の下で英国保守党が見せたようなビジョンに基づいた党再建へと、大衆を説得できる政治家の登場を待つしかない、今の共和党はそんな状況ですかね。