新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

日本の足跡

ネットでは8月4日号が流れています。

Leadersは中国の多国籍企業、Huaweiについてやロンドンオリンピック、ロムニー候補外遊、インドの電力インフラその他満載ですが、その前にFinance and economicsで目立つ記事を見つけたのですが、それは「日本からのレッスン」という、欧州発世界経済危機に関するものでした。曰く、日本はバブル崩壊によって3つの教訓を残してくれた、すなわち1)迅速な対応、2)バランスシート改善、3)大規模な経済対策の3点である、とのこと。記事ではこの考え方に則り、欧州発経済危機に対する先進各国がどのような対応を取り、どのような展望を持てるにいたったのかを端的に分析しています。それによると、アメリカそしてイギリスはまだら模様ながらそこそこの対応を取りつつあり、EUは足取りが遅いことが問題なのだそうで。いずれの国でも必死の努力が続いていることは評価に値する、と言う要素もあるいはあろうかと思います。

しかしながら、日本からの教訓はこれらがいずれもその後にツケを残す危険性があると言うことでもありまして、それはすなわち1)大規模な経済対策と言っても実施可能な支援の規模には自ずから限界があること、2)結局は公的会計にツケを回すことにより、国全体が長期にわたってそのコストを負担することになること、そして何より3)本来なら退場していたはずのゾンビ企業まで生き残らせることにより政治のモラルハザードが蔓延することという、言ってみれば統治の質的劣化が不可避であることにもつながるということをわきまえる必要がある点を、判った上で全力を以て実施しなくてはならない、言ってみれば苦い薬なわけですね。

さすがに株式市場は冷たく、日本のサルまねをしていると言わんばかりの低い株価でしか反応しなかったそうですが。

バブル崩壊後のモラルハザードが直接的な原因かどうかは別にして、確かに日本の政治はモノを決めない方向へとどんどん劣化してきているような気はします。政治家としてハラを切らない古い顔たちに、有権者も愛想尽かしをしていると言うことだと思います。
このあたりについて、政治の新陳代謝を対策として打ち出せるだけのダイナミズムがまだ先進各国に存在しているのかどうか、大変興味深いところです。