新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

660万人の憂鬱

10月26日号のAsiaでは、ASEANの小国・ラオスにおける外国人による土地所有問題と、かの国が抱える根源的な悩みについての記事があります。外交的に日本はASEANを重視する、と言ってはいるものの、個別の国が抱える問題のあれこれに注目しようという流れはなかなか強まってゆかないところがあります。この記事に書かれているような情報も、日本ではあまり知られていないのではないでしょうか。

曰く、中国人とベトナム人、それに少数ながらタイ人による土地所有(100年の期限付きだそうですが)は増加の一途でついに国土の30%を超え、農業の中心がコメ作りであるラオスの稲作耕作面積を超えるまでになった、のだとか。

政権は~ベトナムと同じように共産主義の衣鉢を継ぐ一党支配体制~、中国が狙う鉱山開発プロジェクトに絡んで昆明との間に鉄道が敷設されることを巡る利権もあってか、外国人による土地所有に関係して発生していると見られる熱帯雨林の消失などの問題についてまともに向き合おうとせず、むしろこれらの問題を取り上げようとするジャーナリストや国際的なNGOへの締め付けを強化している、のだそうで。

ミャンマーにおけるスー・チー女史のような、西欧社会への発信装置を持てていないこともあって、ラオスが自国の将来に何を望むのか、それを国際社会がどう評価できるのか、今一つ物事が見えない中で、開発は進められようとしている、という感じでしょうか。

タイ・インドネシア・マレーシアそしてフィリピンのいわゆるASEAN4が、確実に中国とは一線を画した外交を志向しているのに対して、カンボジアそしてラオスは歴史的な関係が強かったり国境を接していたりする分、中国との関係は深いと言えます。ベトナム(ミャンマーもそうでしょうか)のように国土そして人材に恵まれ、必ずしも中国に依存することなくやってこれた国とはいささか状況が異なると言う点を、どのように認識し、どのように尊重するのか。人口わずか660万人の小さな国とはいえ、見過ごすことなく丁寧に対応の考え方を整理する必要があるのだろうと思います。