新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

ホンネとタテマエ

11月9日号のSchumpeterは、アベノミクスの三本目の矢に含まれる強烈な賃上げ要請と、雇用流動化を望むがゆえにホンネでこれに抗するわけにはゆかない大企業の経営者たちについての観察記事となっています。日本経団連に代表される「財界」の方々も、多くはせいぜいボーナスで要請にこたえたい、中長期の景気変動に対応する余力を少しでも残す意味でベースアップは避けたい、という考え方なのだろうと思います。

多くの被雇用者にとって、住宅など金額の大きな買い物を考えるうえで重要なのはやはりボーナスではなく給与の引き上げだろうと思われるのですが、経済が上向きかけたと言っても、大学生の就職は厳しく、100円ショップは相変わらずの繁盛で、上向きの程度が財界のホンネ程度でしかないというのは偽らざる現状だと思います。しかしながらその変化を持続性のあるものに育ててゆかないと、まもなく老大国になる日本の明日は描けないという点もまた事実だろうと思います。

先日、日本経団連事務局で働いている知り合いからメールをもらいました。いわく、「政府の賃上げ要請でヘロヘロです」とのことでしたが、痛みの先に何となく見える取り引きはと言うと、一定程度の賃上げと、一定程度の雇用流動化ではないかと見ています。

今後、被雇用者はますます選別されるようになり、できる人間には賃上げを含む報賞が、そうでない人間には雇用契約の見直しを含む厳しい将来が待っている、というような絵姿がその結論になるのではないかと言うのが私の懸念です。

戦前のゼロ戦開発では、スピードと攻撃力、航続距離のすべてを満足させるために、「求められなかった」防御力が犠牲になったのだそうですが、日本の変化もまた、何か大事なものを置き去りにせざるを得ない変化になるのかもしれません。

せめてアベノミクスが、老大国化する日本にとって常習的な強壮剤の域を脱し、本当の意味での体質強化につながる一手となることを祈らざるを得ませんね、もしも本当にそうだとすると。