新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

あのときのあれは何だったのか、という反省

1月5日号のLexingtonでは、さる年末に亡くなったアメリカのノーマン・シュワルツコフ将軍と、1991年の湾岸戦争を引き合いに、局地戦に関するアメリカのスタンスがどのように変わってきたか、そしてアフガン撤兵を控えるオバマ政権が取り組むべき課題がどれだけ難しいかについての興味深い論評を載せています。

イラクのクウェート侵攻に端を発する湾岸戦争が、アメリカそして多国籍軍の明快な勝利に終わったことは、その当時繰り返しテレビで報道された、アメリカ兵の足にキスするイラク兵の映像とともにまだ広く記憶されていることと思います。記事も凱旋将軍だったシュワルツコフ氏がどれだけの栄誉を以って出迎えられたかを紹介しています。
すなわち、湾岸戦争はベトナム戦争の傷をいやしてくれるものにならんことを皆が期待した、ということであったろうと言うのです。

それなのにその後、イラクのサダム・フセイン大統領(当時)を存命させその位置に残したことが、結果としてイラク戦争の泥沼へと繋がったことが間接的に批判されるに至り、勝利への評価やベトナムの傷をいやすものとしての位置付けについてもやや微妙なものになっていった、ということのようで。

将軍のボスだったコリン・パウエル統合参謀本部議長(当時)が総括した開戦のための3条件というのがあるそうで、それは1)明確な政治的目的があること、2)敵に比べて圧倒的な戦力を持つこと、そして3)大衆の支持があること、だそうです。その意味で、開戦当時そして勝利の瞬間に於いて湾岸戦争はいずれをも満たしており、現時点そして予定される撤兵時期に於いてアフガン戦争は3)において大きな疑問符がつき、2)においてさえ(国対国の戦争とばかりは言えない側面があるため)よくわからない要素があるのではないかと思います。何より大切なのは、1)が達成できたのか?という点だと思うのですが、さてオバマ大統領はアフガンについてどのような総括をされることになるのでしょうか。

凱旋時とは違って、小さく報道されたシュワルツコフ元将軍の死とともに、当時大統領だったブッシュ氏(父)のあまりよくない病状も新聞記事になったのだそうです。その意味で元将軍の死も、湾岸戦争から20年を過ぎて時代の変化を総括する出来ごととして捉えられている、と言うことかと思います。