新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

突き進む、ということについて

何か大きなものが一定の方向に動いてゆく、もしくは肥大化してゆく過程にあるとして、その様子を見ている人がその変化がしばらく続くことを予想したとすると、聞いている方は一定の妥当性を感じるものだと思います。そしてその変化の果てに何か破局的な変化(膨らみ続ける風船はいつか破裂する、といったもの)が予想されることも、妥当性のうちなのかもしれません。

4月19日号の特集記事は、中国の今を多極的に(と言っても政治経済の側面が主ですが)分析しようとするものです。しかしながらその結論は「破局を想起させるほど肥大化した」都市・国・経済そして共産党支配のかじ取りがいかに難しいものであるか、を示すにとどまっています。

人口問題、過大にも見える強気の投資、都市と地方の格差を作り出す戸籍問題、悪化する一途の環境問題、地方政府の腐敗、南シナ海を巡る領土問題等々・・・。

たしかに中国は内政外交とも難しい問題を抱えている状況にあり、その困難性は年を追うごとに増しているのだろうと思うのですが、他方で無視してはいけない要素として、現状掲げる政策の実施に突き進もうとしている強力な政府が存在していることの強みを未だ失っていない、ということがあります。

それがゆえに、記事は台湾には触れず、触れぬがゆえに尖閣諸島問題についても取り上げず、という内容になっているのですが(記者としては不満の残る構成だったろうと思います)、それを除けば「膨らみ続ける風船」が持つ「膨らみ代」あるいは成長余地がどのようなものであるかを多面的に認識するためには適切な記事であったと思います。

中国は、決してすぐにおかしくなったりするような状況にはない、ということを冷静に再確認することが何を意味するか?それはつまり地球温暖化は一層悪化し、領土問題はこじれ、投資リスクは高まり、内政に対する不満は更なるガス抜きを必要とする時代がしばらく続く、ということに他ならず、隣国に住まう者として見れば、機会と脅威の両側面において中国の存在がより大きなものになる、ということですかね。一見大きな変化には見えないこの変化にどう対応するか、がカギになるということかと思います。