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新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

もしもこの世から現金がなくなったら

9月20日号のFree Exchangeは、あくまで仮定の話ではあるのですが、仮にこの世の中から現金というものがなくなることがあったなら、という話について深堀りした分析を示してくれています。なんでそんな話が出るのかと言うと。

なんでも過去20年ほどの間、アメリカのGDPは65%ほど成長したのに、流通経済を支えるはずの50ドル以下の紙幣は19%ほどしか流通量が伸びておらず、反面100ドル札は185%も発行残高が伸びているのだそうで。

また、ATMの台数も頭打ちで、世銀の統計によると2008年に人口10万人あたり83台設置されていたATMが、2012年には68台になったのだとか。

その他にも、現金なるものが存在するおかげで偽札が作られるリスクがあることだとか、すぐにタンス預金化する現金の存在が邪魔をしてマイナス金利の導入が実現しないことだとか、一般生活者から見るとすぐには納得しづらい(経済学を中心に世の中を見ている人間の頭の中が覗けるような)理由があげられています。強いて言えば、現金を廃止して電子決済のみに一本化できれば、現金の持つ匿名性が排除され、犯罪などの発生も減るのではないかと言った議論は、それなりにうなずけなくもないものかもしれません(仮に、本当にそうなればなったで当然対策は取られてしまうのではないかと思いますが)。

さて、日本はというと、アメリカに比べれば圧倒的に現金の役割が重たい経済でありまして、クレジットカードやSUICAも随分と普及してきましたけど、相変わらず主な決済手段は現金、という状況は変わっていないように思われます。しかしながらこの議論の延長線上には、SUICAを中心とした電子マネーのインフラ普及度が高いだけに、仮定の話ながら日本経済が持つ意外な一面も見えてくるような気がします。

仮にいま、すべての現金を廃止して、たとえば銀行口座(クレジットまたはデビットカード)とSUICAに一本化する、という政策を日本が取ることになったとしましょうか。タンス預金を除く流通決済は、もしかしたら世界の先進国の中でもっともスムースに移行できてしまうのではないかと思われます。それくらい日常生活に電子マネーは根付き、それくらい銀行口座(郵貯も含みます)を持っている国民が多いという意味で。それによって、たとえばオレオレ詐欺などの現金による被害は大きく減少すると思われますし、タンス預金に対する課税も随分と見える化されるのではないかと思われます。ただそうなると、どうしてもタンス預金をしたい金持ちのニーズが顕在化して、世界の大国で「現金制度」を持つ通貨の価値がぐっと上がるのではないかというような予測も成り立ってしまうかもしれません。

ま、頭の体操としては面白いかもしれませんが、人類がキャッシュフリーの世の中を実現するには、まだ相当の時間がかかりそうだ、ということですかね。