新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

戦略的にアタマの体操をしてみると

2月28日号のThe Economist誌はBanyanで「埋め立て」を巡るアジアの利害対立事例をいくつか紹介しています。ひとつめは、国境を隔てるマレーシアとシンガポールで、お互いがお互いの埋め立てプロジェクトに難を示す経過になったそうですが、たとえば両国の間にあるジョホール水道を埋め立ててマレーシアが新しい都市を作ると言うプロジェクトについては、規模を大幅縮小して進められる方向にあるのだとか。

この対立を仲裁したのが「海洋に関する国連条約」だそうですが、日本が腐心する沖ノ鳥島の保護についてもこの条約が参照されるようです。歴史的に島と整理されている点に理解の食い違いはないと思うのですが、岩と島の違いは「人が住めるかどうか」だという見解もあるようで、日本は島だと言い、中国は単なる岩だと言う対立が続いている、という話は日本でも報道されていると思います。どちらになるかで「排他的経済水域」の有無が決まるということで、日本としても関心の高いところだろうと思います。島の保全のために様々な人工的努力がなされていることは報道のとおりだろうと思います。

他方で、南シナ海における周辺諸国と中国が帰属をめぐって対立する島々についても、中国が埋め立てや施設建設を進めるなど「人工的努力」を繰り返しています。こちらも上で触れた国連条約が関係してくるとなると、どのように仲裁されるべきなのかについて戦略的な検討が求められるように思うのですが、残念ながらそこまで突っ込んだ報道はあまり耳にしたことがありません。

中国の国益を想定すれば、南シナ海の島々は自分のものであり、沖ノ鳥島は岩である、という整理を落としどころとする戦略で臨んでくると思われるので、日本や関係国の対応としてはその逆のスタンスで戦略を構築し、交渉に臨むことが求められると言うことになろうかと思います。

日本にとっては、自らが関わらない南シナ海の話についてはどうしても腰が引けてしまいがちなところがあるかと思いますが、国際的な問題解決には全体的に矛盾を生じさせない視点がどうしても重要になって来ます。