新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

曲がり角の見方

4月4日号のBusinessには、中国の鉄鋼業がまもなく経験するであろう需要の下り坂の始まりに関する予測記事が出ています。鋼材の生産量は7億5千万トンに近く、消費も7億トン近いという、日本の鉄鋼業に比べてもほぼ7倍の規模を持つ中国の鉄鋼業ですが、中国鋼鉄工業協会会長の張廣寧氏の見解としては「中国の鉄鋼生産量はすでにそのピークを過ぎた」とのこと。

他方で鉱石や原料を供給するイギリスやオーストラリアの企業からは、引き続き需要の増大を期待する声も上がっているようです。

かつて、高度成長期の日本にあって鉄鋼業は経済の右肩上がりを前提にした設備投資を続け、低成長時代へと移行する中で、設備と人そして債務の過剰に苦しむ時代を余儀なくされました。

中国について言うと、生産性向上を目指した合理化は小規模の地方製鉄所とそれを抱える地方政府の抵抗が強く、なかなか進まないようなのですが、考えようによっては、「小さくて効率の悪い製鉄所をたくさん抱えている」状況の方が減産への対応などが取りやすくなるのではないかという気はします(大規模で近代的な設備を少数持つことの方が、生産性向上や温室効果ガス抑制などの面では有利かもしれませんが)。

当事者として難しいのは、右肩上がりを経験したばかりのアタマでピークそして下降線をたどる将来の絵を描くことではないかと思いますが、もし中国の鉄鋼生産がこれから下降線をたどるなら、日本で起きたことも一つの事例として、世界経済の混乱要因にならないようなスムースな調整が行われてゆくことを期待したいと思います。