新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

銅でもいいじゃないか

7月25日号のFinance and economicsには、進展が期待されるTPP交渉についての論評記事が載っています。日本では主に日米交渉のニュースが中心ですが、The Economistの視点に立つと、少し違う見方があることがわかります。

1)貿易の自由化のみならず、知的財産権や人権問題なども厳しい交渉が続けられていること。特に人身売買を巡る交渉を巡り、マレーシアがTPPから脱退する可能性も論議されているようです。

2)各国の抱える「弱み」と自由貿易の矛盾。特にカナダは、その交渉遅れが日本でも報道されていますが、やはり農産品の保護についての問題が大きいようですね。

3)これがアングロサクソン的というか、The Economist的と言えるかと思うのですが、TPPにとって最大の狙いは中国の加盟である、とする考え方。確かに中国抜きでも世界の貿易の4割を占める国々を取り込もうとしているわけで、それはそれで十分影響力を持ちうるものなのだろうと思います。しかしながら知的財産権など貿易に関わるさまざまな要素についてもルールを決めて、そこに中国を呼び込めれば(こちらの決めたルールに従ってもらえれば)と考えるのは、世界経済に占める中国の重みを考えればある意味で当然の関心事であるということなのでしょう。進みつつある交渉に一喜一憂する日本の報道ではなかなか取り上げられませんが、TPPについてはむしろそういった大枠のデザインにこそ意義がある、という見方はできないものでしょうか。

数ある自由貿易協定が、実際には保護主義を完全には払しょくできず、必ずしも所期の働きをしていない状況において、TPP交渉といえども妥協や譲歩が当初目指した目標への到達度を低めることもありうるのだろうと思います。しかしながら、中国に対する交渉力を担保することを考えたとき、たとえ金メダルでなくてもこのタイミングで機能することが大事、という考え方はありうるのかな、と思いますね。