新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

未来のロボット

The Economist 8月15日号のFree Exchangeは、進歩するロボットとそれによって影響されるかもしれない雇用の関係について興味深い論文を紹介しています。それによると、確かにロボットの進歩はそれまで人間が行っていた仕事のうち少なくないものを代替する可能性があるが、銀行のATM導入時に窓口業務にかかる人員が減った際、ATMの保守サービスの仕事が増えたように、新たなシステムの導入プロセスにより生まれる仕事も少なくないため、全体としてみれば雇用の激減は起こらないという考え方があり、The Economistはこの考え方を支持しているようです。言ってみれば鉄腕アトムのよきアドバイザーであり保守管理者だった「お茶の水博士」のような人材が求められるようになる、ということかと。

とはいえ、たとえば自動車の自動運転システムを考えた場合、確かにサポート面で新たな仕事が生まれる要素はあるのだと思いますが、このシステムにより確実に仕事を失うのはそれまでマニュアル運転をしていたドライバー達なわけで、それに比べると新たに生まれる仕事が見えにくい分、どうしても不安が先に立つ、ということのようですね。

どうも昔のアニメの影響なのか、ロボットというとどうしても「人型の機械が独立的に人間にはできないようなことをする」イメージが強いのですが、ここでとりあげた自動車の自動運転システムにしても、基本はコンピューター、センサーなどの組み合わせによるシステム開発で、そこに人間が関わることで初めて使えるシステムになる、という流れこそが未来のロボットのあり方を定義するうえで重要なコンセプトだ、ということかと思います。

The Economistも、人間が提供する「暗黙知」がコンピュータにもわかるようにコード化されるまでにはとても長い時間がかかるだろうと言っていますが、そうだとすると「お茶の水博士」みたいな人材の育成に加えて求められるのは、「暗黙知」を持った人間が参加しやすいプロジェクトの形成であり、操作しやすいシステムのデザイン、ということになるのかもしれません。