新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

テレビ討論会の行方について

The Economist電子版は、9月26日に第一回が予定されているアメリカ大統領選のテレビ討論について、過去の事例をなぞりつつ、今回の選挙結果にも大きな影響をもたらすであろうとの見通しを伝えています。

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1980年の大統領選挙で民主党・カーター陣営が取った戦略は「共和党・レーガン候補にレッテル貼りをすること」だったそうです。すなわち、レーガンは単細胞のおめでたい人間で、戦争好きな右翼で、非常に危険な政策を取ろうとしている、というような。

ところが、テレビ討論がイメージづけたレーガン候補は「落ち着いていて合理的で、意思決定の伴った成果によって支持を決めていなかった有権者に対した」というものだったそうで。

反対に、カーター候補は「管理され、ユーモアがなく」親しみやすさを感じたかという調査ではレーガン候補を下回ったのだそうです。

4年後の再選では、第一回討論で細かい政策の議論があまり好評でなかった流れの中で、第二回討論会においてレーガン大統領はモンデール候補に対して彼の弱点をあげつらうことはせず、自分が「目の輝いた、気の利いたことを言う候補」というイメージづくりに力点を置いたのだそうです。これによって引き分け、もしくは政策議論に関する肩透かしに終わったことが、現職大統領であったレーガン候補にとっては勝ちに等しい討論会になった、のだそうで。

実際のところテレビ討論が左右する投票行動は、言われるほど大きなものではないのかもしれないけれど、ブッシュ息子とアル・ゴアのときもそうだったように、僅差が絶対差になるのがアメリカ大統領選の厳しいところなので、トランプ候補クリントン候補も決して手を抜くわけには行かないだろう、との見立ては当たっているように思います。

トランプ候補については、自らの資格要件に疑問符をつけている多くの共和党支持者に対して、自らが大統領にふさわしいことをどのように説得できるのか。計算高い政治家という評価がついてまわるクリントン候補については、どのように「大統領候補として好むに足る」という評価を得るのか。

このあたり、ほどなく日本でもメディアを駆け巡るであろう第一回討論会の成り行きを吟味するうえで有用な視点ではないかと思います。11月まで、いよいよ選挙戦もヒートアップする時期になってきましたね。