新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

守勢のブッシュ経済政策

4月7日号のUnited Statesのページには、混乱しているように見える米貿易通商政策に関する論評や、地球温暖化への対応を促した米最高裁の決定、2008年大統領選を巡る各候補間の資金獲得競争、元共和党上院院内総務トム・ディレー氏の不人気、地盤のケンタッキー州で苦戦する共和党、アーカンソー州で発生した竜巻被害、消費者金融に縛られる米兵など、アメリカの国内問題を鋭くえぐった記事が載っています。


米韓FTAのわずか数日後、中国からのバルク紙輸入に補助金対応課税を決定した米政府の対応を「いったい前進しようとしているのか、後退しているのか」と批判、なんたたって自由貿易振興のThe Economistですから、アメリカにおける貿易・通商面でのチャイナ・バッシングを批判しています(ちなみに、日本では最近アメリカのチャイナロビーが隠然たる力を持っているかのような報道がありますが、The Economistの伝えるところ、「今年に入って議会に提出された反中国法案は1ダース以上にのぼる」のだそうで、鳥瞰的に見れば裏づけのないセンセーショナリズムが混じっているように見えます)。さらには多数党となった民主党がブッシュ政権に突きつけている要求として、「日本及び中国の通貨操作への迅速な対応策」というのが上げられているそうで、昨今の円安は米民主党から見れば、一つの補助金とさえ見えていることが伺えます。同記事は、WTOドーハラウンドに関する進展がなければブッシュ政権にゆだねられた通商交渉権(いわゆるファストトラックです。今年6月30日まで)の延長は限定的なものにならざるを得ないだろう、との観測を付け加えています。全体的にみればアメリカの通商政策は後退しているように見える、との結論と併せて。

いま一つ注目される記事は、連邦最高裁が1960年のクリーンエア法が政府(EPA:環境保護庁)に地球温暖化防止の責務を負わせている、との司法判断を明確にしたと言う記事です。ブッシュ政権のかたくなな態度とは異なり、米国内には地球温暖化を懸念する声や、温暖化ガス排出規制に関する州政府レベルの具体的対応など、関心は低いどころか高いものがあるのですが、この判断のおかげでさまざまな取り組みが司法的な根拠を手にすることが出来たというのは大きな進展ではないかと思います。世界的にはポスト京都議定書への関心が高まるなか、次期政権でアメリカがどのような対応を取るのかを占うためには有益な情報ではないかと思われます。