新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

キャッシュは中国に

11月17日号の経済関係記事を通覧すると、中国経済がキャッシュをひきつけている印象をとても強くします。まずBriefingでは景気後退の気配が強まる米経済と比較して、新興経済なかんずく中国が株式市場を通じてひきつけるキャッシュの分厚さについて対照的な記事が載っており、Finance and economicsではアメリカへ三番目の銀行が進出した中国にとって、不調に陥った現地金融機関を買い取るという手もある、といった調子で金融面での脅威と捉えられています。ま、確かに市場のおかげでペトロチャイナの株式価値が世界最高を記録したことをはじめとして、キャッシュは中国に集まっています。そして集まったカネはアメリカだけでなく、世界中へと向かいます。

長いこと経済成長と無縁だった南部アフリカを年率5%成長へと押し上げたのも、中国の力が大きいと見るべきでしょう。南アフリカのスタンダード銀行へ中国商工銀行が20%の出資をしたことは象徴的な出来事だと思います。アフリカはと言えば、何分元が小さいので、携帯電話を利用したモバイルバンキングがどれだけ急成長したとしても、依然として小さな規模に過ぎないのですが、中国から見ると米欧が失敗し、日本が尻込みしたアフリカ経済へのてこ入れに活路を見出そうとしている、ということなのだろうと思います。いや、無論、識字率の向上や綱紀粛正など、世代交代を通じたアフリカ側の投資環境改善も当然あるんでしょうけどね。

かつて80年代にアジアがそうだったように、突然の変極点を迎えて離陸するんでしょうか、アフリカ経済も。ここ数年のうちにそれが起きるとすれば、その牽引車は歴史的に負の関係を持たされたインドではなく、間違いなく中国になるのではないかと、そんな気がしています。