新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

そもそもの原因をたどれば

10月25日号のEconomic focusですが、金融危機のそもそもの原因となったアメリカの住宅ローン問題にメスを入れる動きについての記事です。アメリカで一般的なのは、債務不履行となった場合、担保としての家を取られたらそれ以上の債務を負うことはない、いわゆるノンリコース融資だそうですが(正確には担保を取っている以上、完全なノンリコースとは言えないはず)、このアメリカ独自のやり方では、住宅価格が大きく下落して債務ばかりが残ることを嫌う消費者がデフォルトに走りやすい、と言う点を問題視した議論です。ひとつの案は、市況が2割下がったら、ノンリコース条件を取り消せるオプションを入れるというもの。こうなると、日本の債務者がそうであるかのように、借金は破産しない限りいつまでもついて回るということになります。その代り市況が大きく上がった場合には将来的な売却益を手にする権利をつけるというもの。いま一つの案は全体の二割ほどをリコース条件付きのローンにしてしまい、政府系金融機関による低利融資制度でこれを賄おうというものです。後者は日本の住宅金融公庫によく似ていますね。

プロジェクトをしっかりと審査し、担保を取らない代わりに金利を高くする、といういわば攻めのファイナンスから、万日を考えた守りのファイナンスへ(日本は伝統的にこちらばかりですが)。羹に懲りて膾を吹くといいますが、要はバランスが大切ということですね。ローンが払えない→有無を言わさず家を明け渡し、そのかわりローンから解放される、というよりも、ローンが払えない→家から追い立てられる悲劇を防ぎつつ、なんとかローンを最後まで返せる方法を考える、というアプローチの方が、社会的には健全な風土づくり(あきらめない、頑張るなど)に役立つのではないかと言う考えも成り立ちそうです。
http://www.economist.com/finance/displaystory.cfm?story_id=12470547