新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

ファイナンスの現代史

2月25日号のLeadersです。
まずはイランの核開発問題と、それに対応しあぐねる米英および国際社会の取るべき戦略について。次に、ここ20年ほどの間に開発された各種金融サービスと、それがもたらした新しい金融の在り方について、漁業者の漁業権について、インターネットを活用した小売業について、The Economistの統計がアルゼンチンを外したことへの釈明について、という内容です。今週号は特に「金融を巡る技術革新」という特集記事が組まれていることもあり、二番目の記事は密度が濃いです。

過去25年の間に導入された数々のあたらしい金融商品のなかで、「証券化(securitization)」はリスクの分散または拡散を現実のものとしましたし、Credit-debt swap (CDS)は貸し手にとって命綱の役割を果たしてくれた、ということのようです。その他にもexchange traded funds (ETF)やカタストロフ・ボンドなど、それまでなかった革新的な金融サービスが市場を活性化した、という整理なのですが、ここまでの事実関係は間違いなさそうです。ちなみにこれらの商品について、私はあまり詳しくありません。日本でそれほど話題にならないことも一因かもしれません。

The Economistは、これら新しい金融サービスが次々と導入されて市場が活性化された時代を当時のFRB議長にちなんで「グリーンスパン時代」と呼んでいます。
他方で、元FRB議長を務めたポール・ボルカー氏は「ATMの導入以降、金融サービスで本当に役に立ったものなどなかった」という辛口の意見です。確かにこれら金融サービスは結果的に市場の活性化だけでなく、振れ幅が大きくなった相場の暴落や暴走を助長したというような側面もあるのでしょう。The Economistが記事の結論としているのは、これら新しい金融サービスを使うときには、まさかの時の備えとして十分な量の良質な資本が必要である、というものですが、グリーンスパン時代というファイナンスの現代史を総括する、これが結論ということですかね。