新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

ロボットは悩むのか

6月2日号のLeadersです。

最初の記事は、さまざまな場面で実用化が進むロボット、もしくは自動運転装置などを備えた交通機関などに搭載された自律的な判断機構について。二律背反的な「ルール」をどのように処理して、どのように判断するのか。人間が自身の役割を何らかの理由で邪魔しようとした時、機械は人間を排除するのかなど、考えようによっては難しい話についての問題提起がなされています。

次に住民弾圧が続くシリアについて。写真は、こめかみの銃創痕がくっきりとわかるまだいたいけな子供の死体という、ショッキングなものです。国連の調停も目に見える効果を上げていない中、国際社会がその責任をどのように果たしてゆくのか、状況は待ったなしに見えます。

そしてついに為替が96円台を記録した欧州単一通貨ユーロ危機と、スペインの金融システム救済について。経済規模の大きなスペインを救うには、銀行への直接的な資本投入が効果的である半面、直接それをやってしまうと政府の責任をしっかり追及出来ないのではとの懸念もあり、どのような調整が進むか注目されるところです。

次は大統領選挙へと向かうアメリカに於いて、効果を上げている経済政策は州政府単位で実施されているどちらかと言えば共和党寄りの政策にある、とする分析記事です。メディアを見ていると、共和党は茶会と呼ばれる過激派に乗っ取られ、振り回されているような印象も受けますが(目に入る示威活動はその通りかもしれませんが)、どうしてさすがアメリカは、地道な政策レベルではしっかり企業活力を重視した政策を取っている、そしてそれらが州レベルでは実効性を上げているというお話です。オバマ政権下で経済が好転しつつある現状は、これらを勘定に入れないとロムニー候補に不利に働くように見えるかもしれません。でもその推進勢力は、実は州単位の共和党であったというお話は、きめ細かい分析をあてはめるならむしろ共和党に追い風となる話なのかもしれません。

最後はシェールガス開発と環境問題について。石炭に比べてCO2排出量が半分となる天然ガスは、エネルギー転換を進めることにより地球温暖化を緩和できる可能性が高い分、懸念される土壌汚染や地震等への対策を講じたうえで広く活用されるべきエネルギーである、という意見記事です。

こうなったら良いのにな、をThe Economist流に読み説くと、共和党が勝ち、実績のある経済政策が更に実効性を高め、シェールガスが使われ、スペインの銀行が危機的状況を脱して為替が安定し、シリアに多国籍軍が入りアサド大統領を追放し、ロボットはより高度な制御システムにより人間の生活を豊かにする、と言うように読めます。選択肢の中でも比較的妥当性の高い選択かな、と思われるのですが、シリアに対するロシアやシェールガスの開発に反対する環境保護主義者のように、個別の議論を見るとまだ反対する人たちも少なからずいることが判ります。議論の多様性は全体としては社会の豊かさや懐の深さ、民主主義の成熟度を表すものに違いないとは思うのですが、他方でスピードを要求される現代社会のニーズにはなかなか合わないところも大きいように思います。このあたり、ロボットの悩みより数段難しい悩みだと言えそうですが。