新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

竜頭蛇尾、という話

The Economist誌5月23日号のFinance ane economicsには、アメリカが始めた高額所得者に対する課税強化の一環として知られた海外預金口座に対する調査と課税に関する興味深い話が出ています。

Foreign Account Tax Compliance Act (FATCA)というアメリカの法律は、アメリカ国外の金融機関に対して、アメリカ人の顧客情報を開示するか、もしくは罰金を支払うことを求めるもので、主にアメリカ国外に資産を持つことで課税を回避しようと言う富裕層の金融資産を正確に把握し、徴税されるべきものについてきちんと徴税することを狙ったものと言われています。

この法律によって名だたるスイスの金融機関が罰金を支払い、顧客情報をアメリカ当局に開示してきました。ヒットラーナチスからさえ顧客の秘密を守り抜いたということで絶大な信用を誇ってきたスイスの銀行をも屈服させたということで、金融関係者の間ではアメリカ政府の本気度を示す動きとして注目されてきたと思います。ところが。

記事によると、アメリカでは関係当局の高官が退官後に税金対策のため大手金融機関に雇われる例は後を絶たず、オバマ大統領と近いロビイストにも、かつて大手金融機関で税金対策をやっていた経歴を持つ人がいる、のだそうで、だとしたら鳴り物入りで始まり、成果を挙げていると喧伝されているFATCAについても、その徹底ぶりは推して知るべし、ということではないかとされています。

今年初めにブームとなったトマ・ピケティが「富裕層に対する世界的課税」を提案したことは良く知られていますが、これに近い考え方で実施されたアメリカの政策が一方ではお手盛りになっているのだとしたら、ピケティ先生の提案が現実味を持って受け入れられるのは、現実的にはまだ随分と距離感のある話、と言うことになるのではないかと思います。なーんだ、という話かな?