新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

ノーベル賞、他の二人が何をやったのかと言うと

今年10月5日の夜、メディアが一斉に報じたのは2015年のノーベル医学・生理学賞に日本の大村智さんが選ばれた、というニュースでした。駅では号外が配られ、同じタイミングで長年の交渉を経て大筋合意にこぎつけたTPPに関するニュースを二番目に追いやるほどの朗報という扱いで、大村さんご本人のインタビューや、研究以外にも高校の教員からはじまる過去のキャリアについてなど、さまざまな情報が一気に紹介されています。

でも、ちょっと待ってください。たしかノーベル賞は3名に与えられるというお話だったはずですが。

そのあたりについて、The Economist電子版はさすがにバランスが取れた報道をしていまして、同時受賞のウィリアム・キャンベル博士、屠呦呦女史についてもその業績を簡潔に伝えています。

キャンベル博士については、寄生虫生態学の権威で、大村さんが発見された化合物の薬効を証明し、薬として使われるようになるまでのプロセスを司ったことが紹介されています。多くの人を救ったイベルメクチンと言う薬は、大村さんが見つけ、キャンベルさんが使い物になるまでを担当した、という連係プレーによって生まれたものであることがわかります。正しい例えかどうかわかりませんが、言ってみれば素材メーカーと製品メーカーの役割分担みたいな感じでしょうか。

また屠呦呦さんについては、漢方薬から抽出されたマラリア有効成分の発見がその授賞理由だそうですが、彼女が発見した薬は、マラリア原虫がクロロキンやキニーネと言った伝統的な薬剤に耐性を示している中で、2000年から現在に至るまで、世界のマラリア患者を半減させることに貢献した、とのこと。同時に彼女の研究がベトナム戦争時の軍事的研究~戦闘よりも多くの兵士がマラリアの犠牲になったため~によって始められたことも紹介されています。

The Economistは触れていませんが、屠呦呦さんは中国生まれの中国人として自然科学系のノーベル賞を初めて受賞されたこと、また女性であることなど(これは見ればわかる話ですが)、なかなか興味深い選考だったと思います。

日本のメディアも、このあたりについて、少しは目配りをした報道がなされるようにはならないものでしょうかね。