新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

情勢は変わりつつ?

5月21日号のThe Economist誌、および同誌のウェブサイトでアメリカ大統領選挙に関わる最新の情報をチェックしてみると、非常に興味深い話が浮かび上がります。

民主党の大統領候補選びにおいて絶対的な優位を言われるヒラリー・クリントン女史について、数字の上で状況は全く変わっていないのですが、予備選が始まったころに比べるとその周囲を取り巻く環境が大きく変化していることです。

一つには、共和党の候補が民主党よりも早く固まったこと。予備選が始まった当初は泡沫候補と目されていたドナルド・トランプ氏が早々に候補者の地位を固め、今や右翼からかつての下院議長まで、副大統領候補への自薦が相次ぐ状況であるのに対し、圧倒的優勢を伝えられたクリントン女史は未だに撤退しないバーニー・サンダース上院議員の善戦に付き合わされているという状況です。

副大統領候補、は当選してしまえばそれまでという要素もありますが、大統領に万一のことがあった場合のリリーバーであり、実際に歴史上何度も副大統領が大統領に就任する場面を目撃しているアメリカ人からすれば、選挙においては小さくない争点になる話だろうと思います。

今一つは、サンダース上院議員を支持する層が、若者だけでなく白人男性層にも広がっている現象についてです。もともとサンダース氏は独立政治家で、民主党に加入したのもわずか昨年のことなのだそうですが、だとすると長年の党員に比べて民主党愛が強いというわけではないのだろうと思われます。The Economistの読み解きによると、白人男性層が教育水準の高い中間層から富裕層であれば本選挙でクリントン女史を支持する可能性が高いが、教育水準の低い低所得者層だとすると、トランプ候補の支持に回るのではないかとの可能性も示しています。

既存の政党枠に囚われないトランプ氏やサンダース氏に比べると、クリントン女史はどうしても既存の政治や利害関係を代表する人間、と位置付けられてしまうということかと思います。おそらくはそういう意味で、トランプ氏が嫌われているのと同じくらいクリントン女史も世論調査で嫌いであるとする意見が強いようですが、副大統領候補によっては、あるいは今後の政治・経済の動きによっては、トランプ大統領の誕生もあながちありえない話ではなくなってきた、ということなのかなと思います。