新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

固有名詞で覚えようよ

さきごろ、イギリスでタワーマンション火災があり、多くの犠牲者が出た事件は日本でも報道されていましたが、どうしてだか日本のニュースでは固有名詞を報道しなかったので、それが西ロンドンのケンジントンにあるグレンフェル・タワーという建物だったことを知っている方はあまり多くないかもしれません。

www.economist.com

The Economistはさすがにイギリスのメディアだけあって、電子版の記事では結構詳しい話が出ています。火元は4階のアパートにあった冷蔵庫で、それが爆発した火が外壁材を伝わってたちまち広がったと考えられる、と記事は伝えています(外壁材については日本のニュースでも触れたところがあったと思います)。また、この建物には外付けの非常階段も、スプリンクラーも、火災報知機もなかった(!)のだそうで、そう考えると防災上の事例として、日本のタワーマンションには当てはまらない事例なのかもしれません(日本のメディアはだいたいこの辺で見切りをつけるのでしょうね)。

もう少し深堀すると、日本で報道されなかった話として、この「ないないづくし」のアパートは安い物件だったのか、移民などイギリスに来たばかりの人が多く暮らしていた、のだそうです。そしてさらに、メイ首相が現場を訪れたとき、彼女は消防など関係者を慰労するだけで、被災者とは「会わなかった」ことも記事は批判しています(このあたりは以て他山の石とすべき話、だろうと思います)。被災者の自己意識に「被差別」が巣食う可能性の芽を摘むための政治的配慮はなかったのでしょうか。

イギリスやアメリカでも過去にタワー型の建物で起こった火災が多くの人命を奪ってきた事例はあるようです。失敗に学ぶことがいかに難しいか。そのためにはまず、事件を特定できるよう、固有名詞で物事を整理するところから始めるべきではないかと思うのですが。