新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

日本株式会社の遅い改革

The Economist7月1日号のbusinessには、先日身売りが決まったエアバッグ大手のタカタの経営に関する簡潔な論評記事が出ています。ある意味で明快に結論の出た話なので、その書きぶりも淡々としたものですが、失敗は同社における透明性とリーダーシップの欠如にある、とするものです。

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すでに日本のメディアでも、深読みしたものやスクープ情報も含め、様々なことが書かれていますが、東芝やシャープの事件も参照しつつ、The Economistは日本的経営の改革が遅きに失していることへの警鐘を鳴らしています。

私は東電福島原発で有効な地震対策が講じられなかったことも含め、いわゆる大企業における不作為のミスが引き起こす(引き起こしてきた)失敗には構造的な共通点があるように見ていますが、その意味ではタカタの件にも共通するところがあって、それは危機に臨んだときに経営者が見せる想像力の欠如あるいは貧困を、組織として補完する手だてを持てていないことではないかと見ています。逃げ、隠れ、隠し、ついには破たんする。そうすればそうなることが明快に解っていたはずの失敗から逃げられない。

これとは異なる事例として、歴代の有名社長に比べて在任期間が長いわりに功績に乏しいと批判されがちなトヨタの豊田社長について、The Economistはタカタと比較する事例として2009年に発生したリコール問題を積極的な情報開示で乗り切ったことを挙げていますが、確かにトヨタを守ったというその功績だけでも彼が評価されるべきであろうとの議論はある意味で的を得ていると思います。かつて栄華を誇った電気電子は全滅、日産も外資の軍門に下り、このうえ日本企業を代表するトヨタまでおかしなことになっていたとしたら、「ものづくり日本」なんていうおめでたい議論は雲散霧消していたかもしれません。多くの大企業がその勢いに陰りを見せ、経済面で行き詰まりが懸念されている韓国にくらべ、日本がいまだ土俵際で踏みとどまっていられるのはトヨタのおかげ、ということでしょうか。願わくばその踏ん張りに胡坐をかいた現状肯定主義が、タカタに続く不祥事の温床になりませんことを。