新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

10年経つと言うこと

9月3日号は表紙がニューヨーク、世界貿易センタービルのシルエットです。Leadersの一つ目の記事も、9.11発生以来の10年について、という内容なのですが、確かにあれからもう10年も経ったのか、というのが正直な感想です。
10年前のことを思い出すと、確かにあの事件は世界の成り立ちを大きく変えるだけのインパクトを持っていたように思います。
あれ以来、アメリカは険難な国になったと思いますし、特に経済を中心としてですが、この10年もこの先も、大きく挽回することは難しいのではないかと思える状況が続いているように見受けます。
それまでとは違う希望を生み出すはずであったヨーロッパもまた、大きな負のスパイラルから抜け出せずにいるわけで(話は違いますが、仮にEU統合がなく、未だに個別の国が競っていたとしたら、ヨーロッパは果たして今より良かったのだろうか?という議論もあってしかるべきかなと思いました)。
その意味では、日本も含めた先進国世界、あるいは旧西側世界が明るい未来を持てない状態になる時代の、あれは象徴的な出来事だったのかなと思うのですが、新興国がその間にどんどん大きくなって、10年前とは「国際社会」の構図が全く違うものになったことは大変興味深い話です。さらに興味深いのは、アメリカもしくは多くのアメリカ人が敵視すらしたイスラム教は、経済面でさしたる立場を確保するに至らず、中国やインド、ブラジルあたりは必ずしも9.11に絡め取られる背景や責任をほとんど負っていないということがあります。
10年の間に自らを大変苦しめる「テロとの戦い」を完遂したアメリカは、その間味方の繁栄に恵まれることもなく、当面の敵ではないどこかが勝者として栄光に浸るのを傍観せざるを得なかった、というのがその結論だとすると、戦いの選択は何のためだったのだろうか?という思いを禁じ得ません。