新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

世銀の行く末

さて、気を取り直して1月13日号のFinance and EconomicsのEconomic focusで取り上げられていた世界銀行の現状に関する論評を見てみたいと思います。

世界銀行、または国際復興開発銀行、と言えばODAの世界では巨人です。ブレトンウッズ体制を代表する国際金融機関で、過去には良くも悪くも「機能しないODA」の批判の矢面に立たされることの多い機関でした。それでも世銀のEconomistと言えば、肩書きとしては今でもやはり十分なプレステージがある、ような気がします。

記事では「優良顧客を失いつつある世銀」が「ナレッジの銀行」へと看板を架け替えつつあること、しかしながら外部評価を行った経済学者によると、その「ナレッジの銀行」がしばしば知的裏づけなしに開発上の問題に多額の資金を投入するなど慎重さに欠けること(原文ではGuiltyとさえ書かれています)。

一万人ほどの職員の中で調査に従事する職員は77人、それも年々減少しつつあり、さらに各部・各地域に散っていること、それらが制作する数多くの報告書の過半が(読まれずに)書棚で埃を被ること。

貧困への同情ではなく、科学的に測定することで購買力の世界比較を試みる報告書は、経済学者にそれなしでは仕事ができないくらい重宝されていること。そして援助と貧困の関係を分析した報告書を出したこと。

残念ながら、「援助と貧困」については関連付けが簡単ではなかったようです。90年代に起こったODA批判の的となった世銀のトップは、この報告書があたかも護符であるかのように高く評価したようです。いわゆるマクロ経済レベルの政策提言の危険性を認識し、それへの偏重を避けようとしたんでしょうかね。

その後、優秀なる世銀Economistたちは、よりミクロな、より個別の事例に適した提言をまとめるようになったそうで、そろそろその成果を世に問う動きがあっても良いのではないか、と考えているようです。The Economistはこの考えに共鳴しているようで、「頭の悪い批判者(冒頭で参照された外部の評価者のことか?)をより優秀な者と取り替えること」を少数精鋭となった世銀に提言しています。そうすれば正当な評価が得られるようになるはずですよ、とでも言いたげな表現です。

かつて、途上国問題を悪化させた犯人として世銀がスケープゴートにされていたのがウソのような結論ですが、褒め殺しというわけでもないでしょうし、やはり世の中変わってきているということなんでしょうか。

その他、Face Valueのページではインドのタタ財閥当主の話、Finance and economicsでは中国の会計制度見直しの話などが面白かったです。私が批判したからではないと思いますが、「アジアの製造業について」という特別記事も載っています。週末は新刊を眺めつつ、時間があったらこのへんの記事についても書いてみようかなと思います。