新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

虚像?巨象?

9月8日号のCharlemagneは、いつもなら欧州の中の○○、という視点の記事なのに、世界の中の欧州、という論点で書かれていていつもとは一寸トーンが変わってます。もしかするとEditorが夏休みで、ピンチヒッターが立ったのかもしれません(穿ち過ぎ?)。いずれにせよ、地政学的な寄せ集めであるヨーロッパそしてEUは、向こう10年やそこらは成長するだろうけれど、そこから先がつらい、というのが論旨です。この点は素直に同意。なぜなら地政学的に統一性をきちんと保てる場合、具体的には日本や英国などがそうですが、かつての群雄が統一的な仕事をした例はあっても、そうでない場合、力の寄せ集めが必ずしも大きな仕事をすることにならないと思われるからですね。確かにEUの経済力や市場規模、成長性に関して疑問をさしはさむ人は少ないでしょう。でもその経済力を以って、EUは何をしたいのか、という話になるととたんに統一性の弱さが露呈します。

記事からは少し離れますが、その意味でやはりアメリカの強さは際立っていると思うのです。単に民主主義と自由経済を普及するための人工国家にとどまらず、カナダやオーストラリアなど、新大陸に出て行ったアングロサクソンたちの国の中でも傑出した存在になった(なれた)のは、欧州や日本のような地勢的まとまりへの後付けによるフレームワークではなく、「この国は人類に対して何をなすべきか」という基本設計がしっかりしていたことにこそ寄るのであろうと思います。設計思想の深さは単に技術的な面にはとどまりません。よく言われる話ですが、1ドル札の裏に印刷された第3の目とピラミッドが何を意味するのか、と言う疑問があります。同じ話を、たとえば日本の紙幣について考えると、万里の長城は登場しないだろうし、したとしたらそれはそれで物議を醸すでしょうけれど、人類の英知を示すシンボルを通じて精神世界にまで踏み込んだ形で国を設計する、というプロセスこそがかの国の強さの源泉であるような気がしています。EUは、では誰のために何をしたいんでしょうかね。