新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

そんなことに驚かれるなんて

1月19日号のBusinessとInternationalを読み進めていて、ああこれが日本と西欧との文化ギャップの最たるものの一つかもしれないなあと思い当たった記事があったので紹介します。そんなことに驚かれるなんて、と感じられる向きもあろうかと思うのですが、事ほど左様に日本に来た外国人たちはさまざまな「驚き」を日々感じているようです。さらに興味深いのは、彼らの驚きを実際に目撃するまでそれが驚きの対象になるとは露ほども思っていない多くの私たちがいること、でもあります。

いずれにせよ。

Crime and punishimentと書かれた記事によると、三菱重工業はそのホームページに「独占禁止法に違反したことにより営業停止処分を受けました」との情報が載っていた、とのことです。同様にグッドウィル社の派遣業法違反による営業停止処分についても触れられており、日本における「営業停止」という行政処分が一般的であることが紹介されていますが、これはThe Economistもしくは西欧の視点からするとかなり特殊な例と映ったようです。

実際に三菱重工のHPを見てみると、PDFファイルの情報で2007年に4件の「営業停止」処分があったことが判ります。
http://www.mhi.co.jp/nsmw/news/story/pdf/20080116.pdf

まあ、罰金はありうべし。それ以上は当事者となった個人の刑事責任は問われても、社会の公器たる企業の営業そのものを停止するというのは如何なものか、というのがThe Economistの議論(もしくは西欧の一般的な捉え方か)と思います。営業停止をすることで直接の被害をこうむるのは企業のオーナーたる株主、と考えると何も悪いことをしていない株主に経営の責任を負わせるのは筋違い、ということでしょうか。

営業停止について「しかし日本では処罰の方式として一般的なものである」とThe Economistは解説しています。集団責任を重んじる倫理観はアメリカ流の個人処罰はそぐわず、経営陣は会社を守るためにこそたとえ本人に直接の責任がなくても処罰を受け入れる、その代わり悪事そのものはチェックされずに済んでしまう、とも。

儒教文化に根ざす官治制も、反訴制度が整備されていないこと等の遠因と指摘する向きもあるようですが、個人の自由は国によって補償される便益である、と本当に私たちは考えているのでしょうか。もしそうだとすると、個人の自由を人間にとって根源的な権利であるはず、と規定する西欧との、もしかするとこれが最大の文化ギャップと言えるかもしれません。