新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

ドッカーン!

9月5日号です。

表紙が浮世絵の富士山で、そのてっぺんあたりに爆発をあらわす吹き出しと、カタカナで「ドッカーン!」という字が書かれています。長いことThe Economistを読んでますが、表紙に日本語が書かれた号があったかどうかあまり記憶にありません。

さて、Leadersですが日本の総選挙、第二次大戦を巡るロシアの歴史認識とスターリン戦争犯罪隠蔽への牽制、敵味方入り乱れて収拾がつかなくなっているスーダンダルフール地区の包括的停戦協定の試みとオバマ米大統領が派遣した特使への期待、アジアを中心とする地域版自由貿易がWTOドーハラウンドの障害になっているとの読み解き、グーグルが進めるウェブ図書館構想について、開発が進む電気自動車となっています。

最初のBriefingは日本の政権交代について。基本的には事実関係に関する鋭い認識と、民主党政権への妥当な期待が述べられています。Webで見る読者のコメントも常識的な範囲のものが目立ちました。

Briefingを読んでいて思ったのですが、今回の総選挙で日本が実現した政権交代は、途上国でよく見られるようなエネルギッシュなものではなかったようです。開票速報と同時に支持者が町へ繰り出して爆竹を鳴らしたりお祭り騒ぎをする様子も見られませんでしたし、反対派の暴動や大きなデモなどもなく、きわめて淡々と進んだ感があります。また敗者の自民党を見ていても、噴出すスキャンダルで逮捕者が続出したり、国外亡命を企てたりする人もなく、大型選挙違反による逮捕者のニュースすら聞こえてこない状況は、長期政権=腐敗=国民の憎悪の対象、ということには決してなっていなかったことを伺わせます。一言で言えば「大人の選挙」だったということではないでしょうか。

阪神淡路大震災の直後に、略奪も起こさず炊き出しに整然と行列する日本人を、尊敬のまなざしで見ていた外国メディアを思い出しますが、長いこと実現しなかった政権交代も、日本がやればこうなるという見事な見本を示したように私には思えます。「ドッカーン!」は、その意味ではちょっと似合わなかったかな。

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