中国と環境
新年1月6日号のThe Economistを読んでいます。
イランのデモについて、あるいはNHKの受信料問題についてなど、相変わらず感度の高いアンテナが張られているなあと思わされる記事が多い中で、中国の環境問題について二本の記事が出ています。
一つ目の記事は、生物多様性と昨年まで合法だった象牙取引の禁止がもたらした象牙市場の急落などについて。写真はロバの皮革で、中国ではロバの皮から取れるゼラチンが医薬の原料になるのだそうで(なおかつロバの頭数は増えているのだそうで)、そちらの市況は上がったまま、のようです。
さらには、中国が廃棄物の輸入を部分的に禁止したことが先進国に与える影響についても触れられているのですが、そこは先進国側がしっかり対応することで担保されるとすると、中国が環境に舵を切るのは世界にとって悪くない、という結論になっています。
二つ目の記事も環境に関係するのですが、経済学的には「外部不経済」とされがちな環境対策について、今のところインフレ懸念もなく、産業構造の転換(製造業からサービス業へ)を阻害する要因にもならず、中国経済は上手く対応できている、というのがThe Economistの見立てです。
たしかに、20世紀から今に至るまで世界のリーダーたりえたアメリカが、特にトランプ政権ではパリ協定から脱退するなど後ろ向きの姿勢を取りだしている中で、欧州を中心とする環境重視型の先進国に対し、経済運営と環境対策を両立させるという姿を中国が示しうるのであれば、それはアメリカ型自由主義経済よりも中国型社会主義市場経済が世界のためになる、というプレゼンテーションにもつながるものになりえるでしょうから、その意味するところは小さくないのではないかと考えます。
もともと欧州も、そして多くの途上国も、社会主義的な考え方に対する拒否感はアメリカほど強い訳ではありません。だとすると、21世紀初頭において安全保障、人権、経済の分野で常に国際社会から疑念を突きつけられ続けた中国が、2018年に至って環境という切り札によってようやくその劣位を払拭することになるのかもしれませんね。やや大げさに聞こえるかもしれませんが、それが歴史の転換点だと、未来の歴史学者が認識することになるかもしれない話であるように感じています。現時点ではまだ「もしかすると」的な話にすぎませんけど・・。