新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

動きたくても

ネットでは10月21日号が流れているThe Economistですが、Leadersのトップで最近の国際政治~特にグローバリズムへの逆風~について興味深い分析をしてくれています。

www.economist.com

曰く、ドイツでもオーストリアでも(そして多分、この週末に選挙がある日本でも)グローバリズムについて行けなかった人たち、あるいはついて行きたくても諸般の事情でそうできなかった人たちの声が政治の前面に出てきたことの背景には、「場所」の問題があるのだろう、との読み解きです。

「場所」は、たとえば経済が比較的良い地域があったとして、そこへ移りたくても移れない人たちにとっての制約条件になります。自由に移動し、自由に稼ぐ成功者たちは行く先々で稼いで税金を払うので、それを託された政治はその税金を何かに使い、ツケを作るのですが、やがて稼ぎ手がどこかほかのところへ移ってしまうと、政治は年金のツケを含めてその後始末に追われることになります。「稼ぎ手」を製造業(特定の企業ではありません)とし、「どこかほかのところ」をアジア諸国に比定すると、「政治」はまさに今、日本が置かれた状況に他ならない、ようにも読み解けます。

そうするとアメリカでトランプ大統領が出てきた背景と同じく、自由貿易協定を見直して分配への配慮を求める意見が強まる流れが出てくるということかと。立憲民主党が勢いを持つ理由は、いくら経済を良くしても給料は上がらず、「ツケ」の支払いは結局自分に回ってくる(消費税アップ)ことへの苛立ちに起因するのではないか、と読み解けるのではないかと思います。

The Economistの示唆する解決策は、「経済の良い地域へ人の移動を促進すること」だそうで、それに従うと例えば好景気に沸くアジアへ能力ある人を振り向ければ、その人も経済も幸福になるというお話です。高度成長時代に地方から東京へ大勢の人が働きに来たことと似ています。

でも、だからと言ってたとえば日本人の稼ぎ手が中国に働きに行くか?というと、なかなかそのパターンが主流になるという話は難しいわけで(確かに、ごく一部にはそういう例もあるのだとは思います)。もっと言うと、海外で稼いだおカネを「ツケ」の支払いに向ける事の難しさはあきらかでしょう。ゆえに、今の日本にとってこの提案はあっさりボツ、ということになりますね。

動きたくても動けない以上、そこで開き直って勝負するしかない、たとえ少子高齢化が続いても、その中でできるだけのことをやっていくしかない、というのが動けない者の答えになるのだろうと。それが結局は自公政権への消極的賛成、ということですかね、日本の文脈で考えると。