新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

罠でない流動性とユダヤ人のカトリック神父

8月18日号も後半です。夏休みのため薄いので、かなりじっくり読んでもすぐに進んでしまいます。その中で、一寸気になったのが、イギリスで19世紀の取り付け騒ぎに対して浴びせるように金を貸し、「金融危機には金を出せ」、という古典的政策の体現者となったウォルター・バジョット(彼の名を冠したコラムが、The Economistには毎週載ってます)を例に引きながら、流動性の危機に陥った金融機関への対応について、中央銀行の立場がどのようなものであるべきかを論じています。昭和の金融危機(山一證券の最初の危機)同じことをやったのが田中角栄で、彼がバジョットを知っていたのかどうか知りませんが、実践的マクロ経済学者の間ではすでに定説のような政策だったと思われることから、案外官僚の提案を採用しただけなのかもしれません。

モラルハザードを防ぐための罰則のあり方や、更なる危機を呼び込んでしまう危険性など、言い出したらきりがないとはいえ、尋常とはいえない流動性の提供で経済危機を乗り切ることが、決して万全の策などではないことをこの記事は自戒しているようにも見えます。日本では勝って兜の緒を締めよ、と言いますが、夏休みに戒めとして読むには良い記事だと思います。

Obituaryは、ユダヤ系フランス人にしてローマンカトリックの司祭であったルスティガー師の死を伝えています。ユダヤ人であることを捨てなかったカトリック教徒、とは実に珍しいお話ですが。