新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

売ったり買ったり

9月1日号のBusinessのページには、新車開発で企業価値が高まったジャガー&ランドローバー(英)が、自動車大手の世界戦略ともあいまって、買収対象としての人気を高めている話につづいて、マーケットに出てから25年、もはや過去の産業のようにすら扱われるパソコン製造ビジネスが、どっこい生きている話が出ています。ここでも視点はゲートウェイを買収して業界第3位に上ったエイサー、IBMのパソコン事業を買収して同第四位につけているレノボなど、上り調子の企業に対し、オンライン販売のみという戦略が市場拡大の足かせになって一位の座を滑り落ちたデル、というふうに、買収でなければビジネスモデルの話です。確かにわが道を行く東芝は、これら4社に大きく水を開けられて5位ですが、ラップトップの売れ行きがよい事、個人客の増加等市場環境の変化に加え、2007年一年間では世界中で2億6千万台ものPCが売れているのだそうですから(市場成長率12%、それでも全盛期の半分だそうですが)、業界平均は下回っているのかもしれませんが、やはり成長機会に恵まれた分野であることは論を待ちません。問題は、その主な論点が企業の売買もしくはビジネスモデルの構築だけなのか、ということです。

またぞろ製造業軽視に対するThe Economist批判、というわけではありませんが、OSやビジネスモデルも含めて広い意味でのイノベーションを語らずして成長機会を広げてゆく議論にはなりにくいように感じます。それはたとえ車の話でも同じだろうと思うのです。確かに世界戦略の中で買収対象となる比較劣位にある会社が何を模索するかと言われれば、株主の視点からは短期的な企業価値の向上と、少しでも有利な買収条件の獲得、ということになるのでしょうが、社会の公器としての企業が有しているはずの、確実な社会貢献へのコミットメントという側面がないがしろにされているような気がして仕方ありません。もっと地道に商売を語ろうよ、という一読者としての不満、でした。