新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

国の動き

9月22日号について。祝日もあって、多少時間が取れたので、一気に半分くらいまで読んでしまいました。leadersのトップはやはり、サブプライム問題に端を発する経済危機が世界経済に与える影響について。二番目は流石に英国の雑誌だけあって、取り付け騒ぎを起こした英国の銀行とそれを取り巻く金融行政について。その他、独占禁止法マイクロソフトをめぐる訴訟、国難と自由の束縛との関係、イスラエルとパレスチナについて、など。目を引いたのは「非常時は国家が国民の自由を制限しても許されるのか」というコラムですが、実際見方によってはアブグレイブやグアンタナモの出来事は、独裁国家の収容所とさほど変わらない存在である、とすら言えない事もなくて。無論、アメリカが市民に供与する本来的な自由はかけがえのないもの、なのですが。

面白かったのはLettersに、9月8日号に載っていた「ベルギー分割論」への分厚い反応が載っていたことです。賛否両論ある中、積極的現状維持を訴える声が多少弱いように思えたのは気のせいでしょうか?

人口国家の分裂、ということについてはチェコスロバキアが好例として参照されることが多いようですが、ごく最近ではセルビア・モンテネグロが(半ば既定路線だったかと思いますが)平和裡に分離されました。セルビアと言うと、あとはコソボですが、ここは平和には行きそうもありませんが(そもそも「人工国家」という成り立ちではないですね)。

付き合ってみて、欧州というのも不思議なところだと思うのは、言語や風俗・習慣の違いを半ば無視した「ヨーロッパ人」というカテゴリの議論が必ず存在することですかね。それが規模の経済を目指したとたん、小さな者たちが結びついて人工国家を次々と形成した19世紀。東西分裂の時代が終わって、豊かなベルギーはなんとか持ちこたえたのにそうでない東の国々は先に分裂してしまって。長期的にはEUでまた一緒になると言う方向性が明らかなのに、先ずは一旦別れてスタートラインを見極めたい、とでも言うように。

東の国々と同様に、分かれるなら分かれても、それなりの道はあるのでしょうけれど、ことEUの中心たるブリュッセルを抱えた国のことですから、周囲に混乱のない形で結論が出されると良いですね。

Briefingでは世界経済のターニングポイントについて、アジアではネパールの連立政権を離脱した毛沢東主義者、ミャンマーで発生した僧侶のデモ、アメリカでは国民皆保険を打ち出したクリントン候補、地球温暖化防止について、厳しい排出基準を打ち出したバーモント州が投じた一石、など。ネパールも、ミャンマーも、「国」のあり方が少しづつ動き出そうとしています。