新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

ラッキー・デューブの死

10月27日号のObituaryは、南アフリカの反アパルトヘイト歌手、ラッキー・デューブの早すぎる死を伝えています。享年43歳。日本ではほとんど知られていないと思いますが、80年代から音楽を通じて反アパルトヘイト運動に貢献、現在の南アフリカを象徴する存在として高く評価されていたことが、記事からも伝わってきます。

黒人政権が誕生した頃、私はアフリカに居ました。4年間足らずの滞在でしたが、その間に都合2回家族とともに南アフリカを訪れています。その町並みに別世界を見る思いがしたものですが、当時は黒人政権を嫌った白人たちが国外へ移住するという流れが起きていて、日本では考えられない豪邸が日本では考えられない値段で叩き売りされていたのを目撃した記憶があります。首都ヨハネスブルグの治安は悪くなる一方、という時代でした。

時が流れて、デューブの死を伝える記事の締めくくりに「車泥棒にわが子の前で撃たれて死んだ」とあるのを見て、更なる治安の悪化を感じます。世界中の命の値段の安い国々で起きている悲劇を、どう捉えればよいのかという古い疑問を、また新たに突きつけられたような気がします。