新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

ようやく見えました

11月3日号、宗教に関する特集記事ですが、おしまいまで読んでようやくなるほど、と思ったところがあります。結論は、内政面で多民族・多宗教を内包できているアメリカが、外交面で宗教の一部を過激派として阻害することで交渉の道を阻んでいることへの警鐘、ということになります。もっとも、国内で融和的に扱われている「自由なアメリカのイスラム教徒」と、たとえば中東地域でテロを繰り返す過激派と言われる集団を同一視することはできませんし、そもそも現代の宗教は多様化・複雑化しており、それはことによると近代化のベクトルとは逆方向に動いている、さらに単純な保守・革新の切り分けも出来なくなってきている(元来産業界と近かったキリスト教徒保守派が神の造りたもうた地球を守るため、地球温暖化を促進する産業の権益に反対するなど)、という議論がその前提にあります。すなわち、難しい舵取り、ということですね。新興宗教の拡大についても同じ観点から話をさらに難しくする要素、ととらえることもできます。このあたり、アメリカウォッチャーとしてMickelthwait編集長の面目をほどこした結論だったと思います。

ただ世界の紛争がさまざまな宗教の対立と言う側面を有する、と言う議論は、まあ確かにそうだと言えない事もないでしょうけれど、ただやはりスリランカの内戦などはいささかこじつけだったかな、と思います。

だとすると、アルカイダとも、ハマスヒズボラとも、話し合え、ってことになります。で、宗教家を代理人に立てると言う話になるわけですが、そうするとなんだか紛争地域での人質解放交渉をヒントにしたような話、と取れなくもないです。いつぞや日本人が人質になって、現地宗教家の仲介で解放されたことがありましたが(別な事例で、残念ながら殺されてしまったこともありましたね)、たとえばそこから導き出せる有用な知見はないのでしょうか。想像力をたくましくすることで、世界は深く、広がりをもって展開されると言う点で、私も目からうろこが落ちる思いでした。