新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

ナノテクの影

11月27日号、Science and technologyの直前のBriefingは、ナノテクがもたらす道の危険性について、すなわちカーボンナノチューブは人体に安全か、殺菌に使われるナノサイズの銀の粒子が危険ではないかについて、研究はされているものの全てがわかったわけではないこと、しかしながら産業用途のナノテクの幅は広がりつつあり、特許取得件数もうなぎのぼりであることを伝え、新技術がもたらすリスクについて、しっかりと認識すべき、との考えを示しています。

これは古くはクロロフルオカーボン(所謂フロンガスです)がオゾン層を破壊することや、アスベストが悪性腫瘍を引き起こすことなど、当時としては新技術が広まった結果として健康面で不要な被害を引き起こした愚を繰り返すまい、という決意の現われだと思うのですが、新しい技術が世の中に登場してそれがもたらす便益に注目が集まっているとき、否定的な考えを表明することはメディアとして随分勇気の要ることではないかと思います。

研究はされているが疑念すら不十分と言う段階で警鐘を鳴らすこと、に過剰反応だという向きもあるかもしれません。ただ疑問符が呈されたときにはすでに遅い、というくらいナノテクは産業に浸透していると言う事実もあり、その意味ではやはり必要な啓蒙ではないかと思うのです。他のメディアにはできない技かもしれませんし、私が長年The Economistを読んでいることの、理由の一つとも言えると思います。

Scinence and technologyは無精卵子と通常細胞から胎児肝細胞を作る技術について(これが実用化されると自分の臓器のコピーが作れるため、移植医療等の可能性が一気に広がります)、生存競争に勝ち、やがては敗れていなくなった化石時代の巨大昆虫について、幾何学が提供できるかもしれない宇宙のすべてを包含するセオリーについて、子イルカをつれて泳ぐ母イルカは"スリップストリーム"で子供を泳ぎやすくしている、すなわち背負っているに等しいケアをしていることについて、など興味深いです。

Books and artsではヨルダンの故フセイン国王の伝記や、資源外交でアフリカを狙う中国の有様(利権中心主義でアフリカの発展を考えているわけではない)についての評論等が目を引きました。

Obituaryは、ジンバブエが黒人政権になるまえのローデシアでアパルトヘイト政策を推進したイアン・スミス元首相の死を伝えています。あれだけ批判されているムガべ現首相のほうがアパルトヘイト時代よりまし、との主張をあからさまにして。