新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

新しい日本のビジネスモデル

12月1日号の特集は、20ページに渡ってBusiness in Japanというタイトルで、日本のビジネス慣習の変化がもたらす新しい成長モデルについて報告しています。基本的には雇用形態の変化を「アングロサクソン化」と捉え、派遣や転職の一般化を競争力を増すための肯定的な変化であると分析しています。ただ行政など、変化のスピードが遅すぎるため、その効果は限定的または不十分なものに終わるのではないかとの懸念も併せて表明されています。

まあ、うなづけなくもない分析だなあと思うのは、一流大学を出て、そこそこの年齢なのに官庁や大企業をスピンオフしてベンチャーを始める、といったような人生モデルに出会う機会が増えてきたと感じるからです。それこそ一昔前なら、「カタカナの会社」は色眼鏡で見られるような気風すらあったこの国で、最近では例えば私のような人間でもごく普通に企業人と接することができるようになったと思うのです。個人的に感じるのは約10年前くらいから起こった変化だと言うことで、それ以前は私自身大手企業から官庁関係の団体に出向しているような人から、何か色物でも見るような目つきであからさまな見下され方をしたこともありました。

では、変化のスピードは速いほうが良いのか?米欧のような競争原理を前面に出した市場主義に立てばその通りかもしれません。でも、何も日本は彼らのスピードをあたかも標準のように捉える必要はないのではないかと思うのです。なすべき議論がきちんとされている範囲において、マイペースの変化で進めるのが最もスムースなのではないかと思いますし。地球温暖化対策を例に取れば、市場原理の導入が進んでいるのは欧州ですが、予め取り決めた削減枠を売買するキャップアンドトレードに関して言えば、アメリカですらまだ正式導入はされていないわけで。やったほうが良いという総論はおそらく賛成多数となるでしょうけれど、本当にやれるのか、それがベストか、という微細な議論についてきめ細かな対応を取ることにより、最もスムースな展開を志向するのが日本流、ということで。