新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

イスラムへの理解と関心

1月15日号の地域記事をMiddle East and AfricaからEurope, Internationalまで通覧して目に止まったのはイスラムに関する考察のあれこれ、でした。アラブを覆う閉塞感について、近世の歴史に触れつつ欧州とオスマントルコの支配から独立する「アラブのルネッサンス」に入ったとたん中東戦争で敗北したこと、そこから立ち直るためのリーダーに恵まれなかったり、立ち直りのきっかけがつかめなかったこと。その真因として「法が神によるものなのか、人によるものなのかと言う根本的な問題に回答出来ていない」との指摘があるのは、西欧的視点に立てば正鵠を得ていると思います。

Europeを見ると、トルコでオカマタレントが、世俗主義から親イスラムの現政権になってさまざまなプレッシャーを受けるようになってきた、という話もコラムで伝えられています。同性愛はキリスト教でも禁忌だと承知していますが、西側社会では考えられない現象でしょう。

果たしてイスラム社会の政教分離はありえるのか?という論点について一つお伝えしたいのは、教育に関する中東各国政府高官の問題意識で、先日とある外交関係の情報交換会に出たとき、日本に対する初等教育レベルの援助要請がかなり高い優先順位で寄せられた、という情報に接しました。これは関係省庁の担当官からじかに聞いた話なのですが、The Economistの記事と符合するのは現状に関する問題認識で、たとえば驚くほど少ない洋書しかアラビア語に翻訳されていない、学校も質が伴わない、すなわち現状では社会に民主主義を議論できる素地が整っていないと言う点です(勉強したくても古いコーランしかないとして、あなたならどうします?)。政府高官はこの点に問題意識を持っている、ということのようなのですが、果たして日本の教育が答えになるのかどうか。

Internationalでもイスラムと民主主義との議論が深められていますが、象徴的だったのは「これらの議論がなされている場所は主に西欧であり、残念ながらイスラムの中心ではないことだ」との結語だったでしょうか。議論に参加し、西欧型ではない民主主義社会を下支えする教育のあり方を提案できるという、とてつもなくエキサイティングな好機に恵まれているようですけどね、日本は。