新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

ちょっと違うシリア

ネットでは2月11日号が流れています。
Leadersは、シリア問題について、大統領選を控えるロシアについて、先進国経済の停滞について、パキスタンおよび国軍について、アフリカに広がる資源ナショナリズムについて、となっています。

シリア問題についての論評は、シリア国内の状況をめぐる分析には日本で伝えられるそれと比べると情報の深さに明らかな差異が認められます。シリア国内の反政府勢力が内部的に反目しあい、対抗馬を一本化できる状況にないこと。軍閥やギャング、そして自由シリア軍という脱走兵の集まりなど、軍事的にもバラバラなこと。地方・低所得者層では強い多数派のイスラム教スンニ派も、負けた場合の扱いを恐れて結集するアサド大統領の属するアラウィ派および連携するシーア派など少数勢力の前にはなかなか主導権を握れないことなど。

読者コメントには、アサド大統領がこれまで行ってきたインフラ投資や中間層の育成など、成果を訴えるコメントもありましたが、たとえそれが本当だとしても一旦軍による大規模弾圧をやってしまったら、弁護の余地はないように思いますが。

他方、ロシアの行動(ラブロフ外相がダマスカスを訪問し、アサド大統領と会談したとか)や中国のスタンスについての論評は、このタイミングでは当たり前かもしれませんが、差し控えられたようなところがあります。リビアへの対応についてはえらく切れの良かったThe Economistですが、今回はやや歯切れが悪いです。

リビアの場合、良くも悪くも石油があって、経済面で民主化・安定化へのドライブがかかりやすかったところはあると思います。シリアはと言えば、石油もなく、ローマ帝国以来の歴史と伝統があり、アラブにとってはイスラエルに対する防波堤のような位置にある(逆にイスラエルからすればアラブの先鋒でもある)というように、ほぼ純粋に政治的な要素だけで国際社会の対応が決まるのではないかと思うのですが、それこそが最も難儀な知恵の輪だということなのかなと思います。