新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

見極めは難しい

2月11日号のLexingtonは、アメリカで導入される「被雇用者向け保健パッケージ」という政策が巻き起こした宗教と政治の対立(?)についての記事が載っています。
これは何かと言うと、オバマ政権の重要政策の一つとして、雇用者が従業員に対する保健サービスを提供することを義務付けたものなのですが、その中に経口避妊薬の給付が含まれており、たとえばカトリック教会はその義務から除かれているのですが、多様な宗教を持つ人間が集まるところと言う意味で、これら教会が出資・運営する病院や学校はこの義務を負う、とされているのだそうです。カトリック教会側はこの問題に態度を硬化させているそうで、前回の大統領選挙ではオバマ氏を支持したこれら勢力が離反することにもつながりかねないのだとか。

政策自体がもう少し柔軟性のある運用を認めても良かったように思うのですが、でもそうすると政治的なインパクトが弱まるという見方もあるかもしれません。ただ、重要なことは政治的インパクトではなく国民の幸福であり選挙での勝利だと思うなら、もっと頭を使うやり方があったのではないかと思います。

残念ながら宗教が絡みだすと、現在の共和党候補はそのいずれもが多様な宗派をめぐっての客観的・合理的な議論を戦わせにくい弱点を抱えており、この問題もオバマ陣営を追究する材料にはなっても自身の得点に結び付けられるとは必ずしも限らないところがあります。その意味では本来政策論争に資する出来事のはずなのに、共和党側もひっくるめてモヤモヤ感の残る問題と言う感じです。

政策と、論点と、論客の立ち位置と。いずれの観点からも、見極めには微妙な判断が求められるという好例ですが、一言でいえばややこしい問題、ということですかね。

日本でも、動物愛護の観点から、夜8時以降に犬や猫を店に出してはいけないとかいう法律ができたそうですが、法律が作られる段階でキャットカフェドッグカフェの存在がすっかり忘れられていたそうで、アメリカの宗教問題ほどやっかいではないにせよ、頭を使ってないなーという感想には近いものがありますね。平たく言うと立法府の単なるエラー、という気がしますが。