新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

気持ちの問題?

5月12日号のFree Exchangeには、ちょっとした支援が予想以上の効果を上げることがある、という貧困対策に関する研究についての話が出ています。なんでもMITの女性研究者によるものだそうですが、バングラデシュで貧困対策として、おカネでなくたとえばミルクや卵を取るための家畜を与え、それらを消費してしまわないようにちょっとした給料(最低限の食事をとることができるくらい)を与えたところ、受益者の生産性がぐっと上がったという話です。その理由は、彼らがいままでより3割近く長く働くようになったということのようなのですが、その裏には何があるかと言うと。

貧困層といっても、本当に何も持っていない訳ではなく、たとえば子供を数年間学校にやることが全くできないかと言うと、むしろそうではない人が多数だったりするらしいのですが、実際問題として子供の就学率は低いままであることが多い、のだそうです。教育が成果(おカネ)をもたらすためにはちゃんと学校を卒業させなくてはならない、そんなカネはない、だから始めから行かせない。おなじように、失業中ほんのちょっとバスに乗って町に行けば(バス代は負担可能な金額)仕事にありつける、としてもそれをしない。

貧困層が貧困である一つの理由は、言ってみれば気持ちの問題に起因するところが大きいのでは、という話です。「だって」「でも」「どうせ」で始まるネガティブな思考が、せっかくのチャンスに対して真面目であることを妨げる。英語には上手い表現がないのですが、日本語ではこのような状況を「甘え」と言ったりします。

研究を通じて確認されたのは、貧困対策で与えられた仕事をする機会がこれらの気持ちを切り替える役に立ったのでは、と言うことかと思います。そう考えると、当てはまるのは何もバングラデシュの貧困層だけではないはずで、仕事をするということが人生にとってどれだけ大切な要素なのかを改めて感じさせてくれる記事でした。