新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

そう来ますか

ネットでは5月19日号が流れています。
Leadersは、まだ一本目の記事しか見てないのですが、今週号の表紙にもなった「原始人に追われる上場企業という名のマンモス」を想起させる記事です。その内容は、Facebookの新規株式公開がこれまでの所謂IPO企業のそれとやや趣を異にする点などを踏まえ、「株式を公開するより、できればプライベートファンドでやりたい」という起業家の思いを代弁しつつ、株式会社制度はこのままでよいのか?という疑問を投げかけようとするものです。

過去150年にもわたり、有望な事業に対して効果的・効率的におカネを集めることに成功した株式会社制度も、一旦株式公開をするとなると、あれこれと煩雑な手続きや、経営の透明性を確保するためという金科玉条の下、経営者に課せられる負荷が過去にないほど大きくなっていて、その結果起業家をプライベートファンドによる資金調達へと向かわせることになるというのが記事の分析です。確かに、アメリカを中心としていわゆるプライベートキャピタルは規模・内容とも株式公開を選択しなくても相当程度の事業を進めるに足る資金調達を約束するレベルにあるのだろうとは思いますが。

そうすると、「会社は、金持ちだけのもの」という、言ってみれば階級の固定化をも示唆するような流れができてくる懸念すら生じうるのでは、とすら考えてしまいそうですが、いくらプライベートキャピタルが巨大だと言っても、彼らもまた株式市場への依存なしにはやってゆけない訳ですから、その点は杞憂であろうと思われます。とはいえ、本来なら株式公開を通じて社会全体に富を配分する役割を果たしたはずの優良企業が自らの穴に閉じこもるようになる、という姿はやはりいびつなイメージをぬぐいきれません。起業家の立場に立てば、メンドクサイ手続きや格付け会社による厳格な審査・評価に一喜一憂せず経営に専念できるというメリットは大きかろうと思いますが、資本主義の健全な発展を考えるなら、やはり市場を優先させるような考え方が何か導入されてしかるべきではないか、と言う気がします。