新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

歴史が語るユーロの今後

12月17日号のEconomic focusでは、近代アメリカの経済史を参照することでユーロ危機に関する知見を見出そうとする試みがなされています。

なぜアメリカかって?独立から二次大戦にいたるまで、今より各州の独立性が強かったころのアメリカは、経済運営においてまさにユーロ圏諸国が経験しているに似た「地域間格差」と戦っていた、ということなのです。当時の中央銀行に該当するアメリカ第二銀行は、経済不調な地域の発券銀行を潰すなどして人工的デフレ状態を通じた収支バランスの改善を図ったりしたそうですが、その後確たる中央銀行を持たずに経済を運営して来たアメリカでは、たびたび銀行の取り付け騒ぎなどが起こってきたとのこと。で、その地域が不況になると国民は仕事を求めて遥か遠くまで引越しをしたのだそうで(なるほどこのあたりはアメリカ的かな、と思えます)。

こなたユーロ圏諸国で、同様の処方(国民の大移動)が可能かと言うと、コトバの問題や歴史・文化・民族の違いなど、さまざまな障害が想起されますね。この一点を取ってもアメリカの足跡を追いかけるという対策は、どうかするとヨーロッパを「鵜の真似をする烏」にしてしまう可能性が高いのではないかと思います。

それでも、いくつかの主権(当時は州でした)が合同して一つの経済体制を作り上げたという意味においては、人類史上アメリカ合衆国の建設くらいしか先行例を持たないユーロ圏にとって、何でも良いから役に立つ知見を得たいというのは本音ではないかと思います。何か役に立つヒントが見えると良いのですが。